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柱島に現れた


 艦魂達の士気も下がり、とても戦争ができるような気分にはならなかった。
 しかし、同年八月五日、ミッドウェー海戦から二ヵ月後のその日、その大和を元気づけるには十分すぎるほどの出来事があった。
 日本海軍最後の戦艦である大和型戦艦二番艦?超弩級新鋭不沈戦艦『武蔵(むさし)』――つまり、大和の妹が誕生したのだ。

 柱島に現れた『大和』そっくりの新鋭戦艦『武蔵』。真新しく、金属特有の鈍い光で艦体はキラキラと輝いている。
 『大和』と同じく世界最大最強の四六cm砲を三基九門搭載されているその浮かべる城は、世界最強の称号に相応しい勇ましさを輝かせていた。
 そんな『武蔵』は姉艦『大和』の隣に横付けされた。
 両艦は素人では見分けがつかないほどにそっくりだったが、『大和』には連合艦隊旗艦の証、連合艦隊司令長官山本五十六大将の大将旗がマストに掲げられている。それに対し『武蔵』は軍艦旗のみしかはためいていなかった。
 しかし、『武蔵』は『大和』より旗艦としての司令設備が充実しているので、旗艦変更は時間の問題と言われていた。
 だが、全長二六三mもある世界最大最強の戦艦が二隻並んでいると、その勇ましさは桁が違う。すさまじい威圧を放ち、その光は神々しい。
 まさに、二隻は大艦巨砲主義の申し子であった。
 そして、戦艦『武蔵』は『大和』と同じ代々最強の戦艦が配置される第一戦隊に配属される事になった。

 『大和』の甲板には大勢の女性――艦魂が集まっていた。
 先頭は大和。隣には大和に無理やり呼ばれた翔輝。その後ろに長門以下戦艦艦魂。そしてその後ろに二人に減ってしまった主力空母艦魂、翔鶴と瑞鶴。さらには軽空母の艦魂がいて、さらに後方にはその他大勢の艦魂がいる。
 そして、大和の数メートル前に光が発生して中から大和に似た、大和よりさらに若い、というか幼い十二歳くらいの真っ白(今は夏なので全員白色の夏服)な第一種軍装に身を包んだ少女が現れた。長髪の大和に対し少女は肩にさらりと髪がかかる程度のセミロングだ。
 大和ぐらいならまだ笑いですむが、目の前の少女の軍服姿は笑いを通り過ぎて滑稽(こっけい)にすら見える。だが、その身体から放たれるオーラはどの艦魂よりも力強い。
 喜怒哀楽が豊富な大和に対し、少女は山城と同じく無表情だった。
 少女はゆっくりと大和達に近づき、大和の前で静かに敬礼した。http://www.cnqxw113.com
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「???大日本帝国海軍大和型戦艦二番艦?戦艦『武蔵』の艦魂」
 無表情少女――武蔵はそう名乗ると目の前にいる緊張した顔をした大和を見詰める。
 大和は緊張しながら初めて会う自分の妹に向かって敬礼した。
「大日本帝国海軍大和型戦艦一番艦?連合艦隊旗艦?戦艦『大和』艦魂――あなたの姉です」
 今ここに、姉妹が初対面した。
 大和は嬉しそうに微笑んで手を伸ばす。握手の合図だ。武蔵はそれに気づき、無表情のまま手を差し出す。
 二人の手はがっちりと結ばれた。
 その瞬間、爆発音のような歓喜の叫びがと拍手が天高く響いた。
 意気消沈していた艦魂達にとって、武蔵の誕生は士気を上げるには十分すぎた。なにせ日本海軍は航空時代を自ら幕開けさせたというのにいまだに大艦巨砲主義を信じている。そんな彼女達に大艦巨砲主義の王者とも言うべき武蔵は神のような存在であった。大和と武蔵が並んだ今、艦魂達の士気や戦意は急上昇した。
 大和は笑顔で自分の妹を見る。
「武蔵。私の事は『お姉ちゃん』って呼んで」
 大和の恥ずかしそうな顔での注文に、武蔵は初めて表情を変えた。だが、すぐに先程のような無表情に戻る。
「???嫌だ」
 その予想していた反応に、大和はがっくりと落胆する。
by okokabcd | 2013-10-14 14:59
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